90年以上前のお墓の傾き直しと、クリーニング・花立加工等。姫路市網干区寺院墓地

姫路市・たつの市・太子町・相生市を中心にお仕事をさせていただいています、八田(はった)石材の八田俊之です。姫路市網干区のお寺様墓地にて、90年以上前のお墓の傾き直しとあわせ、クリーニング・花立加工等をお任せいただきましたので、ご紹介いたします。

 

姫路市網干区寺院墓地 傾き直し・クリーニング・花立加工等

お世話になっているお寺様の墓地にお墓をお持ちの方から、「お墓が傾いているので見てほしい」とご連絡をいただきました。早速お寺様へ向かい、現地を確認させていただきました。

 

こちらがご相談いただいたお墓です。このお写真では少し分かりにくいですが、左側に傾いています。昭和4年建立の90年以上経った神戸型のお墓で、額縁加工の棹石、猫足の台座がついた高級加工の立派なお墓です。棹石と猫足は磨きのある青木石で、そのほかは叩き仕上げの北木石で建てられていました。棹石とほかの部分に違う石を使ったお墓は、こうした古いお墓ではよく見られます。

お客様からは、お墓の傾きを直すのとあわせ、お墓をきれいにしたいというご相談もいただきました。花立も昔ながらの造りで穴が小さいので、扱いやすくしたいというご希望もありました。

 

後ろから見ると、傾いているのがよく分かります。90年以上前のお墓ですので、今のお墓のようなコンクリートの基礎はありません。そのため、長い間に少しずつ傾いてしまったのだと思います。また、棹石や台座部分などには、長い間に蓄積した水垢やカビなどの汚れも目立つようになっていました。現地でお打ち合わせを行い、お墓の据え直しとクリーニング、花立の加工をさせていただくことになりました。

 

工事完了です。傾きがなくなり、クリーニングで美しさを取り戻しました!

工程としては、まずは据え直しのための基礎施工から行いました。お墓を取り外したら、工場へ持ち帰ってクリーニングや花立の加工などの作業を行います。現地では地面を少し掘り下げて基礎のコンクリートベースを打ちました。しばらく養生期間を置いて基礎がしっかり固まったら、きれいになった墓石を据え直します。周りにバラスを敷いて、仕上げです。

 

汚れが落ちて、石本来の白さが戻っています。水洗いと、汚れの強いところは専用の薬品を使い、丁寧に汚れを落としています。棹石と猫足は磨きが取れないように注意しながら作業を進めました。

花立は、以前のものは穴がかなり小さく、お花が入らないとお困りでした。穴を広げる加工をして着脱できるステンレス製の花筒を入れたので、お水の入れ替えがとても楽になりました。たくさんのお水が入るのでお花も長持ちしますし、取り外して丸洗いできるので清潔です。花立の側面には、中に水が入っても溜まらないよう水抜きの穴も設けました。

 

後方から見たところです。コンクリート基礎の上にしっかり水平に据え直したので、安心してお参りいただけます。要所要所で耐震ボンドを使用して据え直したので、以前よりも安全性が高くなっています。目地もきれいに入れ直し、隙間から水が入ることもなくなりました。

 

お墓周りは土のままで、雨の日などは泥がはねてしまうとお困りでしたので、周りに明るい色合いのバラスを敷いて完成となりました。お客様は、ちょうど据え直しをしているときに見に来てくださいました。傾きがなくなったことよりお墓がきれいになったことをとても喜んでくださって、「こんなにきれいになるんですね!」とおっしゃっていました^^ このたびは、お墓工事を弊社にお任せいただきましてありがとうございました。不便を感じながらも、長い歴史のあるお墓を大切にお参りされてきたお客様に喜んでいただくことができてうれしい限りです。安心してお参りできるお墓になりましたので、これからもどうぞ末永くお参りくださいませ。何かお困りの際は、いつでもお声かけください。

 

今回は、90年以上前のお墓の据え直しとクリーニング等の工事をご紹介いたしました。姫路では、大正・昭和初期に建てられたお墓はまだまだたくさん見られますが、今のような電動工具もない時代に、ノミとセットウなどの道具を使ってすべて手作業で加工した、当時の職人さんの技術にはいつも驚かされます。今回のお墓も、猫足部分はガタツキもなく4点できちっと据えられるように、台座にホゾのようなくぼみがあるなど工夫されていました。細かい家紋や額加工など繊細な部分からも、当時の職人さんの仕事ぶりに思いを馳せるお仕事になりました。

また今回は、90年以上が経っているにも関わらず、クリーニングをしたことでかなり本来の色合いを取り戻すことができました。実はこれは、耐久性の高い御影石で建てられていたおかげで可能だったリニューアルでもあります。この棹石と猫足なら、きっとあと100年は持つと思います。長い年月お参りするお墓の、将来を考えた石の選定の大切さも感じました。