たつの市御津町自治会墓地にて、軍人墓の周辺整備と碑文の建立

姫路市・たつの市・太子町・相生市を中心にお仕事をさせていただいています、八田(はった)石材の八田俊之です。たつの市御津町自治会墓地にて、軍人墓の周辺整備と碑文の建立をお任せいただきました。

たつの市御津町自治会墓地 軍人墓の周辺整備・碑文建立

 

たつの市にお墓をお持ちのお客様がご相談にお越しくださいました。よくお話を伺うと、私の祖父の遠縁にあたる方でした。私も母も初めてお会いしたのですが、私どもが石屋をしていることをご存じで、相談しようとお店までお越し下さったそうです。

 

こちらは、たつの市御津町の自治会墓地にあるご相談のお墓です。お施主様のお二人のお兄様の軍人墓なのですが、きちんとした道もなく、勾配も急でお参りにはとても危険です。

 

最近久しぶりにご夫妻でお参りにお越しになったところ、雑草に埋もれて荒れてしまったお墓の状態をとても忍びなく思われたそうで、お兄様方のため、きれいに整備して安全に気持ちよくお参りができるようにしたいとご相談いただきました。また、特攻で亡くなったお兄様方のことを後世に残したいという思いから、碑文を建立することもご希望でした。

今回の整備工事は、周囲も荒れていたのでとても大掛かりな工事になりました。いつも社寺の工事等でお世話になっている建設業者様と協力して、お施主様の思いをお聞きしながら工事計画を立て、着工させていただきました。

 

工事が完了しました! とても立派で、お参りがしやすいお墓に生まれ変わりました。

司法書士でありながら土地家屋調査士等のお仕事をされていた関係上、測量等もされるお客様は、ご自分で平面図等を書いてきてくださるなど、お二人のお兄様のため、何とかきれいに整備したいという強いお気持ちを感じました。

 

傾斜地でしたので、コンクリート擁壁を使いしっかりとした土留めを作って、安全でお参りしやすいお墓に整備しました。土木工事は建設業者様の方で工事してもらい、弊社は階段の石貼りや玉垣、碑文の建立を担当させていただきました。

 

階段の石貼りはお施主様のご希望です。両側に手すりが付いていて、ご高齢のお施主様にも上りやすくなっています。また、墓地の囲いは当初はフェンスにする案もありましたが、軍人さんのお墓にふさわしい、神社と同じ石製の玉垣を設置しました。遠くから見かけたときにも「なんだろう?」と気になるほど立派で、たくさんの方に目にしてもらう機会も増えると思いました。

 

こちらがお墓と、完成した碑文です。土間はコンクリートを打って、歩きやすくなっています。

 

碑文本体はインド産の黒御影石です。碑文の土台は、お墓と同じ間知石の石垣を採用しました。石垣の角の部分は、「江戸切り」という石垣特有の加工をしています。

 

碑文の内容はお施主様が考えられたものです。新聞に寄稿されることもあったので、そうした内容を含めた文章が刻まれています。お兄様方が若くして特攻で亡くなったこと、この碑文を建立することにした理由、特攻に向かったお兄様方のお気持ちなど、後世の人に伝えたい思いが込められています。実際のお兄様が残された日記もあり、読ませていただくと本当に心に迫るものがありました。いまは教育現場でもこうした詳しい内容を伝えることがないそうなので、残して伝えたいというお気持ちがよく分かりました。

 

墓地整備がすべて完了し、完成式が行われました。式次第もお施主様がすべて準備されました。除幕の準備をしているところです。

当日は、お子様やご親戚、知人の方、報道関係の方など、20名ほどの方がお越しになりました。私と建設業者の代表もお声かけいただき、参列させていただきました。お施主様は今の世界情勢も交えて、こういう歴史があったこと、戦争は絶対にしてはいけないことなど様々なお話をされて、思いを込めた碑文を紹介されていました。

 

完成したお墓と碑文をご覧になったお施主様と奥様には、大変喜んで下さいました。お施主様だけでなく奥様も、工事の最中も見に来てくださるなどとても積極的に関わって下さり、最後には「本当にきれいにしていただいてありがとうございました」ととても嬉しいお言葉もいただくことができました。思いのこもった大切なお墓の整備、碑文の建立をお任せいただきまして、私も光栄に感じております。本当にありがとうございました。

今回は、大規模な墓地の整備と碑文の建立という珍しいお仕事でした。お話の中でお施主様が、「私の一生のうちにせなあかんことのひとつや」と話しておられたのがとても印象に残っています。お墓をお参りするご親族だけでなく、全く知らない方にもこの碑文とお墓を見てもらいたい、伝えてもらいたいと考えておられたので、「戦争をしてはいけない」と言葉で言うことは簡単ですが、今の平和はこうした先人たちの思いや歴史の上にあることを、自分よりもずっと後の世代まで伝えることを使命と感じ、こうして形として残したいと強く思われたのではないかと思います。私自身、工事に携わることで改めて学ばせていただいたことの多かったお仕事でした。